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言霊量子論 その9

執筆:ラボラトリオ研究員 杉山 彰

もう一つの「あいまい」性

「あいまい」性という言葉を辞書で調べてみると「物事がはっきりしない状態」と訳されています。また、同義語としては優柔不断とか不明瞭とかという言葉もあります。ま、どっちに転んでも「あいまい」性という言葉は、あまりいい意味として使われていない場合が多いようです。しかし、この「あいまい」性という言葉には、実はもう一つ、別の使われ方があるのです。もちろん、このときの使われ方も「物事がはっきりしない状態」としての意味で使われるのですが、とても重要な概念を定義する言葉として使われています。「<合間>がいい」という使われ方です。ま、アナロジー的には「中今」とも相通じる使われ方とも言えます。

たとえば「Yes or No」の二者択一的判断では絶対に結論が出せないとき、判断に行き詰ったとき、Yes からNo までの間に0.1、0.2・・・0.8、0.9 と連続的にYes 度(ちょっとYes、もうちょっとYesという数値)をとって、人間の中間的な感覚というものを数値化して解決する数学的手法のことです。あいまい理論と訳されている、ファジー理論の発想です。このファジー理論は、なめらかな判断を獲得するアルゴリズムとして、多くの家電製品などに採用され、家電製品の使い勝手を飛躍的に向上させたのでした。

考えてみれば、世の中には合理的に割り切れることはむしろ稀なことであって、その多くは因果関係が複雑に絡み合って、割り切れるものではありません。自然の本質は「あいまい」なのです。その自然に対して私たちができるのは、「だいたいの測定や確率的な予測を行うこと」だけなのです。それしかできないのではなく、自然現象、つまり森羅万象とは、もともと「あいまい」そのものだったのです。

ここで話が相転移します。実は、この「あいまい」性は、量子理論の骨格とも言える不確定性原理と、きわめてよく似ているのです。もちろんアナロジー的に、です。ご存じのように、不確定性原理は、1928年にハイゼンベルグが「ある物質(量子)に関する「位置」と「運動量」を測定するとき、両者を同時に一つの値に確定することはできず、避けられない不確かさが残る※1」と導き出したものです。ハイゼンベルグは、この式を不確かさの幅をあらわすΔ(デルタ)記号を使って、「Δ×(位置の不確かさ)×Δp(運動量の不確かさ)≧ h(プランク定数)」とあらわしました。ちょっと難しくなりましたがご勘弁ください。

ミクロの世界では、物質(量子)の位置と運動量は同時に確定できないということをあらわしているのですが、ま、簡単に言ってしまえば、「あちらを立てるとこちらが立たず」的なパラドックス・「あいまい」性の問題です。事実、ハイゼンベルグは「ミクロの世界には逃れられない「あいまい」性があり、すべてを確定することはできない※2」とも述べています。

そして、ここでさらに相転移します。日本語の漢字と仮名との「あいまい」性に相転移します。日本語は、意味を漢字で、音は仮名で、という二行併読・二重表記の構造を持つ言語です。「修理固成」と書いて「つくりかためなせ」と読んでも「しゅうりこせい」と読んでも何の違和感も無く、その差異を頭に染みこませていきます。

言霊設計学において七沢先生は、

日本語は相対的な意味を同時に抱える言語である。自己と他者の区別が「あいまい」な日本語は自他未分の幼稚な精神性を意味するものではない。むしろ成熟した精神性だといえる

と述べられています。

それにしても残念なのは、1994年12月7日にストックホルムで行われたでノーベル賞受賞記念講演において、大江健三郎氏が「あいまいな日本の私」というタイトルでスピーチされたとき、森羅万象の本質は「あいまい」性にある、とでもスピーチしてくれていればよかったのに、と思うのは私だけだろうか。(つづく)

※1、2.出典・量子論を楽しむ本・佐藤勝彦

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【杉山 彰(すぎやま あきら)プロフィール】

◎立命館大学 産業社会学部卒
 1974年、(株)タイムにコピーライターとして入社。
 以後(株)タイムに10年間勤務した後、杉山彰事務所を主宰。
 1990年、株式会社 JCN研究所を設立
 1993年、株式会社CSK関連会社 
 日本レジホンシステムズ(ナレッジモデリング株式会社の前身)と
 マーケティング顧問契約を締結
 ※この時期に、七沢先生との知遇を得て、現在に至る。
 1995年、松下電器産業(株)開発本部・映像音響情報研究所の
 コンセプトメーカーとして顧問契約(技術支援業務契約)を締結。
 2010年、株式会社 JCN研究所を休眠、現在に至る。

◎〈作成論文&レポート〉
 ・「マトリックス・マネージメント」
 ・「オープンマインド・ヒューマン・ネットワーキング」
 ・「コンピュータの中の日本語」
 ・「新・遺伝的アルゴリズム論」
 ・「知識社会におけるヒューマンネットワーキング経営の在り方」
 ・「人間と夢」 等

◎〈開発システム〉
 ・コンピュータにおける日本語処理機能としての
  カナ漢字置換装置・JCN〈愛(ai)〉
 ・置換アルゴリズムの応用システム「TAO/TIME認証システム」
 ・TAO時計装置

◎〈出願特許〉
 ・「カナ漢字自動置換システム」
 ・「新・遺伝的アルゴリズムによる、漢字混じり文章生成装置」
 ・「アナログ計時とディジタル計時と絶対時間を同時共時に
   計測表示できるTAO時計装置」
 ・「音符システムを活用した、新・中間言語アルゴリズム」
 ・「時間軸をキーデータとする、システム辞書の生成方法」
 ・「利用履歴データをID化した、新・ファイル管理システム」等

◎〈取得特許〉
 「TAO時計装置」(米国特許)、
 「TAO・TIME認証システム」(国際特許) 等

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