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日本という、このすばらしい国 その12

執筆:ラボラトリオ研究員 杉山 彰

さて、前回からの続きを。

1万年以上も前から日本列島に棲んでいたといわれる縄文人が膠着語を喋っていたのは間違いないのですが、同じ種類の膠着語を喋っていたのではなく、それぞれの地域ごとに異なる膠着語を喋っていたのではないでしょうか。

南北に3,600kmもの長大な距離的な隔たりを考えれば、いわゆる方言というようなレベルの違いではなく、日本語とトルコ語とフィンランド語とハンガリー語というぐらいの違いだったのではないでしょうか。そのような状況のところに、中国大陸から渡来した難民と共に漢字が持ち込まれたのです。

漢字が持ち込まれた初期の頃は、中国語(漢字文)で書いて、中国語のまま読んだはずです。そのうちに固有名詞の一部を、それぞれの地域で喋られていた日本語(話し言葉)に近い漢字音を借りてあらわしていったに違いありません。

最終的には中国語と日本語との本質的な違いが問題になってきたのでしょう。中国語を日本語に訳したり、日本語読み(倭訓)したりしているうちに、日本語読みの語順で漢字文を書くようになり、さらには漢字文で書いてはいるが文章の発想そのものを日本語でしている。つまり日本語的漢字文(倭習)で文章を書くようになったようです。いわゆる中国語のカスタマイズです。

その結果、日本語そのものを漢字で書くことが日常化したようです。その延長線上に発明されたのが「ひらがな」であり、「カタカナ」に違いありません。ちなみに持統天皇が詠んだ歌で、以上の経緯をあらわしてみます。

(1)持統天皇が日本語で発想して詠んだ歌が万葉集(巻1/29)にあります。

はるすぎて なつきたるらし しろたへの ころもほしたり あめのかぐやま


(2)持統天皇は、この歌を日本語の訓読みの語順で漢字文にしました。

春過而 夏来良之 白妙能 衣乾有 天之香来山


(3)持統天皇は、この漢字文をさらに日本語にしました。

春過ぎて夏来るらし白妙の衣干したり天の香具山


中国語は孤立語で、膠着語の日本語とは文法も語順もまるで異なる言語です。しかし中国語が用いる漢字は、象形文字が高度に進化した表意文字であり、表音文字であり、表語文字です。森羅万象のすべてを「文字」で象形したといっても過言ではありません。

日本語は、森羅万象のすべてを「言葉」であらわしていったのではないでしょうか。我が国の言葉が「言霊」と言われているのは、森羅万象のすべての響きを「音」であらわしていったからに違いありません。

『はるすぎて なつきたるらし しろたへの ころもほしたり あめのかぐやま』と「音」にすれば、『春過ぎて夏来るらし白妙の衣干したり天の香具山』という情景が「響き」として「言葉」として思い浮かんできます。

古事記を編纂した太安万侶は、帝紀や旧辞や天皇記や国記を暗記していたと思われる稗田阿礼が、語り部として訥々と暗誦していく日本の歴史を、漢字に置き換えて文章にしていったのでしょう。当然、はじめは中国語に翻訳しようと思ったに違いありません。相当に苦労したようです。太安万侶は古事記の序文に次のような嘆きの文章を残しています。

「どういう言葉で書いたらいいのかわからない。漢文風に書くと本当の気持ちが表れない。日本語の現実から遠く離れてしまう。そうかといって、今喋っている言葉の通りを漢字の音を借りてずらずら書いていったのでは、長ったらしくて、締まりがなくなってしまう」
(出典:「日本語と日本人」司馬遼太郎対談集)


漢字で書かれた書物は、様々な知識が詰まっている知識の宝庫といえます。言葉のように時間がたてば忘れてしまうこともなく、継承しようと思えば、特定の人間たちの間で、正確に素早く教育できる文化文明です。漢字を習得した縄文人と習得しなかった、もしくは習得できなかった縄文人との間で格差が、漢字デバイドとして発生したとしても不思議はありません。

分子生物学者の大野乾博士は、著書「大いなる仮説」において、“言語が生まれると文明進化の高速化が可能となり、加速度的に進展する。そのスピードは分子進化の100万倍以上である” と著しています。言語を習得した人類が、さらに文字を習得すれば、その文明進化のスピードは、言語とは比べものにならないほどに、さらに高速化することは疑いの余地がありません。

現に、現代においてディジタルデバイドが発生し、情報知識を習得した人間、しなかった人間、コンピュータが使える人間、使えない人間との格差は大きな社会問題(例えば、就職や昇進や昇給などの格差)となっています。

(つづく)

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【杉山 彰(すぎやま あきら)プロフィール】

◎立命館大学 産業社会学部卒
 1974年、(株)タイムにコピーライターとして入社。
 以後(株)タイムに10年間勤務した後、杉山彰事務所を主宰。
 1990年、株式会社 JCN研究所を設立
 1993年、株式会社CSK関連会社 
 日本レジホンシステムズ(ナレッジモデリング株式会社の前身)と
 マーケティング顧問契約を締結
 ※この時期に、七沢先生との知遇を得て、現在に至る。
 1995年、松下電器産業(株)開発本部・映像音響情報研究所の
 コンセプトメーカーとして顧問契約(技術支援業務契約)を締結。
 2010年、株式会社 JCN研究所を休眠、現在に至る。

◎〈作成論文&レポート〉
 ・「マトリックス・マネージメント」
 ・「オープンマインド・ヒューマン・ネットワーキング」
 ・「コンピュータの中の日本語」
 ・「新・遺伝的アルゴリズム論」
 ・「知識社会におけるヒューマンネットワーキング経営の在り方」
 ・「人間と夢」 等

◎〈開発システム〉
 ・コンピュータにおける日本語処理機能としての
  カナ漢字置換装置・JCN〈愛(ai)〉
 ・置換アルゴリズムの応用システム「TAO/TIME認証システム」
 ・TAO時計装置

◎〈出願特許〉
 ・「カナ漢字自動置換システム」
 ・「新・遺伝的アルゴリズムによる、漢字混じり文章生成装置」
 ・「アナログ計時とディジタル計時と絶対時間を同時共時に
   計測表示できるTAO時計装置」
 ・「音符システムを活用した、新・中間言語アルゴリズム」
 ・「時間軸をキーデータとする、システム辞書の生成方法」
 ・「利用履歴データをID化した、新・ファイル管理システム」等

◎〈取得特許〉
 「TAO時計装置」(米国特許)、
 「TAO・TIME認証システム」(国際特許) 等


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