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「地球歳時記・いきもののうた Impressions of living things」にみる言葉の本質

執筆:ラボラトリオ研究員 七沢 嶺


俳句は五・七・五のわずか十七音で構成される世界で最も短い詩型である

季語という先人たちが培った言葉を核として自然を表現する。
いにしえより、自己の気持ちを自然に託して和歌は詠まれてきた。
俳句を通して日本人の精神は正しく継承されてきたのである。

俳句はその音韻構造により日本語独自の文化ともいえるが、言語の本質は世界に共通しているはずである。
聖書における「はじめに言葉ありき」とは有名な一節である。
この世は言葉で出来ており、ヒトを人たらしめているものもまた言葉なのである。

また、本書「地球歳時記・いきもののうた Impressions of living things」を語るにあたり古今和歌集仮名序を以下に引用したい。

やまとうたは、人の心を種として、万の言の葉とぞなれりける。世の中にある人、ことわざ繁きものなれば、心に思ふことを、見るもの聞くものにつけて、言ひ出せるなり。
花に鳴く鶯、水に住む蛙の声を聞けば、生きとし生けるもの、いづれか歌をよまざりける。
力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ、男女のなかをも和らげ、猛き武士の心をも慰むるは歌なり。


本書の表題にある通り『いきもののうた』を詠めば、世界は和するのである。科学は世界を記述し、文学は世界を変えるのである。

私は本書を手にとった時、清らかさを感じた。
頁をめくればその鮮やかさに圧倒された。色鮮やかな画と俳句の世界が広がっていた。
私の知らない新たな文化がそこにあった。

Haiku俳句は母国語で表現できるように三行詩という型をとっている。
母国語の音韻を大事にしていることがよくわかった。

本書に収録されている句はすべて子どもたちが詠んだものである。
世界各国、五十七地域の子どもたちである。

句も画もすべて、とても純粋で美しい。
大人の詠む句ばかりを勉強していた私にとって大きな衝撃であった。
今まで見たどの句よりも、澄んでいたのである。
水のような清らかさであった。

私は俳句の勉強をし始めた時、「俳句らしいもの」をつくろうと奮闘した。
その結果、清らかさとは程遠い濁った自己陶酔の句ができた。
知識だけに頼り、恥ずかしくない句を詠もうとすればするほど誤った道を歩むことになる。

私は本書から俳句の本当に大切なことを教えてもらえた。

最後に本書に収録されている句を引用させていただく。
(すべての句をここで紹介したいほどに優れた句ばかりであることは言うまでもない)

   チョウが
   飛んでいく
   月明かりに導かれて
   ポルトガル(9歳)


   青い海底に
   絶滅していくシロナガスクジラ
   目には見えない悲しみよ

   ベトナム(15歳)


   朝のわたし
   わたしの目は
   宇宙の奇跡を見る

   モンゴル(11歳)


   魚鉢で泳ぐ二匹の魚
   あぶくを出して
   願いごとをした

   インド・13歳


   毎日毎日、木を眺めていた
   切りたおされるその日まで
   愛する木よ、さようなら

   ノルウェー(12歳)


   カモメが飛ぶ
   青くて四角い
   わたしの窓

   クロアチア(8歳)


   だんごむし
   はらをかかえて
   わらってる

   日本(7歳)


   小さなフクロウ
   夜中に起きて友を誘う
   一緒に星を数えよう

   中国(11歳)


   暗闇のセミ
   麦の穂から音楽
   短い夜

   イタリア(15歳)


すべての句にご自身で描かれた画が寄り添っている。
絵画、詩、和歌の統合された、新たな文化の創造である。

本書の制作に関わられた皆様に心より感謝申し上げます。

・・・・・・・・・・

【七沢 嶺 プロフィール】

祖父が脚本を手掛けていた甲府放送児童劇団にて、兄・畑野慶とともに小学二年からの六年間、週末は演劇に親しむ。
地元山梨の工学部を卒業後、農業、重機操縦者、運転手、看護師、調理師、技術者と様々な仕事を経験する。
現在、neten株式会社の技術屋事務として業務を行う傍ら文学の道を志す。専攻は短詩型文学(俳句・短歌)。


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