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『鬼滅の刃 無限列車編』にみる神道の宇宙観

こんにちは。Parole編集部です。
映画『鬼滅の刃 無限列車編』の勢いが止まりません。
興行収入は259億円(11月29日現在)まで続伸し、すでに歴代2位までは射程に入ったといえそうです。
おかげさまで、前回お届けした記事『“鬼滅の刃 無限列車編” から紐解く日本人の使命とは?』も予想以上にご好評をいただきました。
そこで今回、改めて大野靖志と蒼井夢治さんに対談をお願いし、鬼滅のなかに表れている神道の要素について語っていただきました。
(繰り返しになりますが、ネタバレになる内容も含まれていますので、ご了承ください)


【編集部】
前回は、本作から読み取れる日本人の使命について語っていただき、おかげさまで皆さまからご好評をいただきました。
人の使命というものは、その人のベースとなっている精神性とダイレクトに繋がっていると思うのですが、日本人の精神性の枠組みともいえる「神道」や「神話」の要素は、本作でどのように表れているとお考えでしょうか。

【蒼井】
アニメに限らず、映画の物語では通常、主人公を1人に絞って立てますが、本作では、炭治郎と煉獄という2人の主人公が存在しています。2つの作品がひとつに融合されていると言っていいでしょう。
一般的に、物語には『ヒーローズジャーニー(英雄の旅路)』という鉄板の構成法があって、それをベースにした流れにすると人が共感するといわれています。
これはジョセフ・キャンベルという神話学者が、数多くの世界の神話を研究するなかで発見した共通項であり、多くの映画がこの流れに沿って作られています。スターウォーズでも、ジョージ・ルーカスがキャンベルを特別顧問に迎えて、この考え方を作品に取り入れたそうです。

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本作では、無限列車で炭治郎が魘夢(えんむ)を倒した時点でクライマックスというか、すでにゴールに到達しているのですが、それさえも途中経過地点にして、煉獄が主人公の話へと続きます。いわば、2つの神話がひとつになっているというか。
映画のなかには、ヒーローズジャーニーが中途半端に使われて駄作になっているものもありますが、本作ではひとつの神話として結実されていて、よくやったな、と感じました。

【大野】
そういうイレギュラーな構成になっていたんですね。おっしゃるように、違和感を感じずに最後まで楽しめました。
前回でもお話したことですが、鬼殺隊のトップに位置する彼らは「柱」と呼ばれていて、神ということを表していますよね。
まさに彼らの「神の物語」が語られていると捉えていいと思います。

【蒼井】
そうですね。例えば、呼吸法の名前にもそれが見受けられるのではないかと思います。
ヒノカミ神楽は竈門家に代々伝わる厄払いの神楽であると同時に、それを舞うときの呼吸法ですね。
全集中の呼吸の基本である「日の呼吸」に、炭治郎が体得した「水の呼吸」の動きも取り入れられているため、これは炭治郎独自の「日の呼吸」とも言えると思います。

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日と水、というと、前回のお話でも出てきましたが、炭治郎の無意識領域が思い浮かびます。青い空が一面に映る水面と、その上で太陽のように光り輝く球によって描写されていました。
この辺のことが神の概念と繋がるように思うのですが、いかがでしょうか。

【大野】
炭治郎の無意識が、太陽と水によって成り立っているということでしょうか。
白川神道の教えでは、古事記において天地開闢のときに最初に登場する「天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)」が、元は水の神であったと伝えています。
湖の水面下にあったその神は「水中主(みなかぬし)」であって、そこから高く上がったときに天之御中主神になるんです。
そして、天之御中主が陰から陽に転じて、天照大神になったとされます。
天之御中主神は宇宙の根源神であると同時に、水の神であると考えられています。つまり、水は万物の根源であるということを示唆しているんですね。

【蒼井】
「御」という一文字も加わって、神がバージョンアップした感じです。
普通は「太陽=天照大神」と簡単に紐付けてしまいそうですが、炭治郎の無意識領域に天御中主神が存在するという洞察も可能ということですね。

【編集部】
なるほど、神道を理解していなければ出てこない発想ですね。
宇宙の根源というところからすれば、ブラックホールが思い浮かびましたが、その点はいかがでしょうか。
昔のSF映画では、すべてのものは、ブラックホールに引き寄せされると、特異点に達する前に粉々になってしまうという設定が多かったように思います。しかし、最新の観測によると、ブラックホールの向こうに「もうひとつの宇宙」があったと聞いています。

【大野】
天之御中主神は「天の真中を領する神」という意味ですから、宇宙の中心にあるブラックホールと同義であると考えてもいいと思います。現代科学では、宇宙に中心はないというのが定説ということは置いておいて。
もしかすると、炭治郎が日輪刀を手にしたとき、黒色(ブラック)に変わったことも、関係があるのかも知れませんね。
無から有を生み出すというのか、まったく新しい、もうひとつの宇宙への入り口を炭治郎が切り開く、と考えるのもロマンがありますね。作者の方から、考えすぎだと突っ込まれるかも知れませんが。(笑)

【編集部】
とても興味深いお話ですね。
神道において、宇宙の根源が水に象徴されていることは初めて知りました。
木火土金水(もっかどごんすい)」という5つの元素が万物を成すという「五行」の考え方がありますが、それも何か繋がりがあるとお考えですか。

【大野】
そうですね。全集中の呼吸の基本は「水・炎、風・雷・岩」なので五行とはぴったり一致はしませんが、作者の方は意識されているかも知れません。

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「木・火・土・金・水」の五行とは別に、「地・水・火・空・風」という五大という考え方もあって、それを合わせたものに「天・地」を加えたもの(木・火・土・金・水・天・地・風・空)が、白川神道でいう「九行」、つまり、ナインエレメンツなんです。こうしてみると、やはり神道の考え方と共通するものを感じます。
炭治郎の姓は竈門(かまど)ですが、竈(かまど)は土を意味します。
前回のお話にもありましたが、白川神道でいう五魂のなかで、土を意味するのは「泥魂(ぬるみたま)」であり、幸魂、和魂、荒魂、奇魂、という四魂を統合する働きを持つ「精魂(くわしみたま)」と同義なんですね。

【蒼井】
竈にそんな統合の意味があるとは思いませんでした。ストーリー全編を通して、バラエティー豊かな柱たちと一丸となって鬼に立ち向かう炭治郎のイメージからすれば、彼とその先祖の姓に「竈」という文字が入っているのも、偶然以上の何かを感じます。

【大野】
日本人の総体として存在する無意識領域のなかにこのような情報があって、それがストーリーのアイデアとして顕在化しているのではないでしょうか。
そのような概念が、一見、関連性のないように思えても、実はどこかで繋がっているというか。ある意味、それが私たちのDNAに書き込まれた情報とも言えますね。
神道は日本人の精神性を形づくるものとして古代から引き継がれているものですから、私たちが感動するものの多くは、意識的であれ、無意識的であれ、神道の概念に繋がるものが多く存在するのではないかと思います。

【蒼井】
なるほど、私たちのもつDNAの情報に共鳴しているということですね。それは感覚的にとても納得できます。

【編集部】
今、台湾で鬼滅の刃の人気が急上昇しているようです。
鬼滅のようなアニメをはじめ、日本の文化がそのようにして世界に積極的に受け入れられている事実を前にすると、私たち日本人が人類共通のDNAを活性化させる何かを提供できるということを確信させられます。
今作の映画に続き、鬼滅の漫画の後半がアニメ化されると思います。その時はまた、別の切り口でインタビューさせていただきますので、よろしくお願いします。
今回も貴重なお話をありがとうございました。

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【蒼井夢治(あおいゆめじ)プロフィール】
クリエイティブエージェント。
1972年京都生まれ、同志社大学経済学部卒。

演出家・コンセプトプランナー・デザイナー
ストーリボードアーティスト
CGアニメ監督
プロヂューサーなどを歴任し
クリエイティブ業界で活動。
2012年、伊勢神宮の式年遷宮にて
イントロダクションPVムービー
「いせのいすずのもりのみや」
CGアニメ監督・原作を担当。
伊勢神宮1200年の歴史上初のCGアニメとなった。
以降、世界最古かつ最新の「おみち」の文化継承を模索する。

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