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漆 ─ 和の叡智がそこにある

執筆:美術家・山梨大学大学院 教授 井坂 健一郎


漆と共生してきた日本人

我々日本人は、漆と共に生きてきました。
古くは9000年ほど前の縄文時代前期の装飾品に漆が施されていたことがわかっています。すでにその頃に様々な色の漆もあり、おそらくは縄文人が混色するという技術を持っていたと推測できます。

飛鳥時代の法隆寺の「玉虫厨子」も漆で絵が描かれていますし、奈良時代の「阿修羅像」は漆と布だけで造られた仏像彫刻として世界的に有名です。
平安時代の末期に建立された「中尊寺金色堂」は、全体が漆による芸術空間になっています。

江戸時代には箸、椀、箪笥など、防虫の効果も含めて生活の中に漆が入るようになり、日本人の生活文化に必要なものとなって現代に至ります。

よく「漆は、かぶれるのでは?」ということを耳にしますが、完全に乾燥した漆にかぶれることはありません。
東京藝術大学の漆専攻出身の漆工芸作家に尋ねたところ、そのような回答をいただきました。

商品として売られている物に、稀にかぶれることもありますが、それは完全に乾ききっていない状態で出荷されてしまったことが原因によるものです。
もちろん、製作工程で扱う際の生の漆には、人によってかぶれることがあります。


ピアノの黒色は日本発

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ピアノの色といえば、黒色を思い浮かべる人が多いでしょう。
ピアノは本来、木目調でした。
では、なぜ黒色のピアノが生まれたのでしょうか。

ご存知のようにピアノはヨーロッパで誕生し、江戸時代後期の長崎にドイツ人医師のシーボルトが贈ったものが日本最古のピアノだとされています。

そして日本の場合、ヨーロッパと比べて湿気が多いため、カビなどの発生から木目調のものは適さないという理由で、ピアノを漆で黒くコーティングしたと考えられています。

それが逆にヨーロッパに伝わり、漆の美しさに魅了されたことからピアノが漆で黒く塗られるようになりました。

その他、漆を塗った理由として、木目調のピアノの場合、複数の板を組み合わせてボディをつくるため、木目を合わせるのが難しく、表面を塗装することで木目が合っていないことをカバーしたとも言われています。

漆は高価なため、現在では合成樹脂の塗料を漆の代わりに塗っているピアノも多く、色も黒色以外に登場してきました。


漆は地球を救う

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ドイツでは国家プロジェクトとして、漆に含まれる酵素のラッカーゼを利用した抗がん剤の研究が進んでいます。
中国では漢方薬としての漆の利用の研究が進んでいるそうです。

これまでにも漆の抗菌作用に関して複数の検証結果が日本国内で発表されています。

福井県工業技術センターでは、黄色ブドウ球菌に対する実験が行われ、漆を塗って1ヶ月後と1年後の塗膜双方に同レベルの抗菌効果があることが発表されています。

京都工芸漆器協同組合では、漆を塗ったプラスチックの表面上に大腸菌やMRSA、サルモネラ、腸炎ビブリオを放置する実験が行われ、4時間後には菌が半減し、24時間後にはゼロになるというデータが示されました。

新型コロナウイルスが猛威をふるい始めた頃、私は漆を自らのアート作品に使用できないかと実験を試みました。
それは、漆の効能を私なりに認識しており、「今、ここで」という意志が働いたための行動でした。

私が現在実験中の「アクリル板に漆で絵を描く手法」の試作品(上記の左図)では、アクリル板に起こる静電気を利用して、そこに菌やウイルスを付着させ、漆の効能により死滅させられないかという仮定のもとで試作しました。

もう一つ、「チタン板に漆で絵を描く手法」(上記の右図)でも実験しましたが、漆をチタンの表面に定着させるのに、180度の高温で20分程度の焼成時間を必要とするため、実現化するのが至難の業でした。

アクリル板に漆で絵を描いたものは、室(むろ)に数時間から数日、あるいは数カ月入れることで漆の定着が強固になるだけではなく、色調にも味わいが生まれることがわかっています。

そのアクリル板と漆の試作品を使って、今年の4月から新型コロナウイルス対策用の実験をしています。

直径20cmのその試作品を室内の四隅に配置し、1週間経過後の部屋の状況を調べた結果、非常に空気が浄化されました。

世間の動向として、春先から遠隔での会議や集会を徹底されていますが、このアクリル板と漆の試作品を設置した空間では、コロナウイルス禍でも100人規模の対面会議を可能としました(記録写真も存在しますが、現在のところ公開できません)。
科学的な実証はまだ行われていませんので、あまり詳しくはここに書くことができません。

かなり真実に近い推測の域では、これまで多くの機関で実験されてきた漆の効能と同じく、このアクリル板と漆の試作品は菌やウイルスに対する効能があると思います。

それを単なる機能的なものとしてではなく、芸術性を兼ね備えたものに昇華させたいと考えているところです。

漆は英語で「japan」と呼びます。
その「Japan」が地球を救うはずです。


・・・・・・・・・・

【井坂 健一郎(いさか けんいちろう)プロフィール】

1966年 愛知県生まれ。美術家・国立大学法人 山梨大学大学院 教授。
東京藝術大学(油画)、筑波大学大学院修士課程(洋画)及び博士課程(芸術学)に学び、現職。2010年に公益信託 大木記念美術作家助成基金を受ける。
山梨県立美術館、伊勢丹新宿店アートギャラリー、銀座三越ギャラリー、秋山画廊、ギャルリー志門などでの個展をはじめ、国内外の企画展への出品も多数ある。病院・医院、レストラン、オフィスなどでのアートプロジェクトも手掛けている。
2010年より当時の七沢研究所に関わり、祝殿およびロゴストンセンターの建築デザインをはじめ、Nigi、ハフリ、別天水などのプロダクトデザインも手がけた。その他、和器出版の書籍の装幀も数冊担当している。

【井坂健一郎 オフィシャル・ウェブサイト】
http://isakart.com/



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