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お金と時間の問題を、もう一度考えてみよう その3

執筆:ラボラトリオ研究員 杉山 彰

さて、前回からの続きです。
前回は、農業社会になってはじめてお金というものの必要性が生まれたというところまでのお話でした。そこで今回は、いよいよお金が生まれ、お金が流通し始めるようになって、いったいどんな問題が生まれてきたか・・・。さあ、お話の始まりです。 

一つを得ると一つを失う

市場が常設化し、農業社会が出現すれば、度量衡が制定され、重さや量や長さを「はかる単位」が決まります。そして文字が統一されます。<お金>が登場し、普及するための必須条件の一つです。

「はかる単位」が決まると、それぞれの単位の「最小単位」が決まります。「最小単位」とは、これ以上分割できない事実です。<お金>でいえば、「円」の最小単位は1円ということです。もちろん、何銭・何厘・何毛という単位は存在しますが、1円玉を分割して50銭という貨幣は、現在は存在しません。日常使う<お金>=<貨幣>としては、最小単位は1円です。最小単位はあくまで「決めごと」でいいのです。

<お金>の最小単位が決まることによってはじめて、その延長線上に<お金>の「単品管理」が可能となるのです。企業経営においても、売上至上主義から利益至上主義へと経営方針を転換するときには、この「単品管理」の手法が必須条件なのです。

図1

それはなぜかというと、そもそも市場が常設化し、農業社会が出現した頃に「最小単位」を決めたのは「単品管理」の必要に迫られたからです。

例えば、お米100gを魚200gと交換する場合、お米の価値を「1」にして魚の価値の価値を「2」とする、という必要に迫られたのです。「1」を決めればすべてが決まる、という真理に気づいた人たちがいたのでした。初期の農業社会では、この単品管理が当たり前であり、上手く機能していました。扱う量が、目に見える量だったからです。

しかし工業社会にはいると、単品管理は少しずつ揺らいでいったのでした。扱う量が膨大になり、目に見えにくくなっていったからです。記述する道具も紙とペンの時代では、人海戦術に頼るしかありません。単品管理することがコストを膨らませ、仕事がはかどらなくなると判断して部門管理への道を歩み出したのです。

部門管理の初期の頃は、単純に効率を考えての判断でした。しかし、この部門管理には大きな落とし穴が待ち受けていたのです。「事実は不快」という人間の問題でした。扱う事実の量が増えると、人間は、その事実をまとめて部門管理しようとします。効率が良いからです。始めの頃は部門管理の効率の良さが経営効率の改善に寄与しますが、時が経つにに従って、「不快な事実は、まとめて薄めてしまう」という作為が頻繁化します。度量衡が制定され、重さや量や長さを「はかる単位」が決まり、いろいろなモノを量り、計られ、測るようになると、一つ一つの事実の精度は飛躍的に向上するが、全体の事実の精度は逆にブレはじめてくるのです。

そう。「一つを得ると一つを失う」のです。 

そして生産地と消費地が分離した

市場が各地に常設されるようになった。水田が各地で開墾されるようになった。そして生産と消費の間に、いろいろな労働が存在するようになった。管理する労働、販売する労働、経営する労働などなどです。こうして、人間の役割と責任が細分化されていったのでした。

そして余剰生産物が発生した。モノが動くようになった。余剰生産物が移動するようになった。ヒトが動くようになった。余剰生産物が度量衡で算段されるようになった。情報が動くようになった。そうした中で、生産地と消費地が分離したのでした。

言うまでもなく生産地は農村社会であり、消費地は都市社会です。ここに至ってはじめて<お金>が生まれる必然性が誕生したのです。流通販売ビジネスに必要な「ヒト・モノ・情報・カネ」が揃ったのです。<お金>が発生する余地が生まれたのです。

都市社会の文明文化の構築は、自然との決別にあります。太陽が沈んでも灯りをつけて起きている。寒くなれば暖房する。暑くなれば冷房する。この問題は廃棄熱が増加する熱エントロピーの問題と直面します。エントロピーとは熱力学の第二法則のことで、簡単に言うと「その空間が閉じていれば、熱は、熱い方から冷たい方へ流れ、決して冷たい方から熱い方へは流れない」という法則です。地球という閉じた空間で、人間が、今のように廃棄熱を発生し続ければ、熱エントロピーが増え続け、やがて地球は人間が住めなくなる惑星へと変化してしまう可能性が高くなります。

図2

エントロピーの法則は、色々な問題に適用できる法則でもあります。例えば、社会という閉じた空間で、貧困と犯罪とストレスが増大すれば、精神エントロピーが増え続け、やがて混沌とした社会へと変化してしまう可能性が高くなります。

では、解決策はあるのか? あります。ネゲントロピー的な生き方をするという方策です。ネゲントロピーは、エルビン・シュレディンガーが彼の著書である「生命とはなにか」の中で“生命はエントロピーの法則に逆らう未知のエネルギーによって動いている”と主張し、ネガティブ・エントロピー(負のエントロピー)と命名し、これが縮まってネゲントロピーという名称になったようです。私たち人間のカラダの仕組みは、ネゲントロピーの原理が作用していると言えるのです。

人間は動植物を食べて排泄して、微生物の食料を生産します。その食料を微生物が食べて排泄して、植物の食料を生産します。その食料を植物が食べて排泄して、動物の食料を生産します。そして人間は、その動物と植物を食べて・・・というように食物連鎖して循環させています。植物がはきだす酸素を動物が呼吸し、動物がはきだす二酸化炭素を植物が呼吸して、というように同じく循環しています。

かつて、私たち人間は、このような循環の営みを自然の中で行ってきました。従って、自然の仕組みもネゲントロピーの原理が作用します。循環します。都市社会の誕生は、エントロピー増大の事実と対峙する心構えが必要になるのです。熱エントロピーの増大、そして精神エントロピーの増大。生産地と消費地が分離したことによって、都市社会が誕生し、そして私たち人間社会は、熱エントロピーのシンボルとしての「科学の発生と挫折と再生」、精神エントロピーのシンボルとしての「宗教の発生と挫折と再生」、この二つの、じつはまったく相反する事象と対峙していかなくてはならない運命と人類は直面することになったのでした。 (つづく)

その4につづく

その2にもどる

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【杉山 彰(すぎやま あきら)プロフィール】

◎立命館大学 産業社会学部卒
 1974年、(株)タイムにコピーライターとして入社。
 以後(株)タイムに10年間勤務した後、杉山彰事務所を主宰。
 1990年、株式会社 JCN研究所を設立
 1993年、株式会社CSK関連会社 
 日本レジホンシステムズ(ナレッジモデリング株式会社の前身)と
 マーケティング顧問契約を締結
 ※この時期に、七沢先生との知遇を得て、現在に至る。
 1995年、松下電器産業(株)開発本部・映像音響情報研究所の
 コンセプトメーカーとして顧問契約(技術支援業務契約)を締結。
 2010年、株式会社 JCN研究所を休眠、現在に至る。

◎〈作成論文&レポート〉
・「マトリックス・マネージメント」
 ・「オープンマインド・ヒューマン・ネットワーキング」
 ・「コンピュータの中の日本語」
 ・「新・遺伝的アルゴリズム論」
 ・「知識社会におけるヒューマンネットワーキング経営の在り方」
 ・「人間と夢」 等

◎〈開発システム〉
 ・コンピュータにおける日本語処理機能としての
  カナ漢字置換装置・JCN〈愛(ai)〉
 ・置換アルゴリズムの応用システム「TAO/TIME認証システム」
 ・TAO時計装置

◎〈出願特許〉
 ・「カナ漢字自動置換システム」
 ・「新・遺伝的アルゴリズムによる、漢字混じり文章生成装置」
 ・「アナログ計時とディジタル計時と絶対時間を同時共時に
   計測表示できるTAO時計装置」
 ・「音符システムを活用した、新・中間言語アルゴリズム」
 ・「時間軸をキーデータとする、システム辞書の生成方法」
 ・「利用履歴データをID化した、新・ファイル管理システム」等

◎〈取得特許〉
 「TAO時計装置」(米国特許)、
 「TAO・TIME認証システム」(国際特許) 等

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